<翌朝>
『兄さん!ここで寝とるんかぁ!!』
仲間らしいおっさんの声で起こされた。
また、えらく早く来たもんだ。。。
今度のおっさんもえらく話し好きのおっさんで、一人であれこれ話しまくった。
こっちは、これ以上変なのが集まってこないうちに出発しようと急いで片付ける。
『わしなぁ~家があるんやけど、好きでフーテンやっとんねん。もう半年も家に帰っとらん』
確かに昨夜の男たちの言うとおりみたいだ。
などと思っていると
急に
『兄さん、金持ってるんか?これやるで』
と言いながら
なんと
1万円札が出てきた!一瞬固まる俺・・・
『大丈夫大丈夫、ちゃんと働いてるからお金はありますよ。大丈夫』
といっても『ええから兄ちゃんもっとけ!
遠慮はいらん!』
と、全く信じてくれない。
すん~ごくしつっこく断って、ようやくブツブツ言いながらお金をひっこめてくれた。
ホームレスからお金を恵まれそうになったやつなんて俺くらいのもんだろう・・・
どうせなら記念にもらっておいた方が良かったか???(笑)
そうこうしているうちに、ようやく彼が帰った。
と思ったら、すぐに引き返してきた。
手にぶっ壊れたラジカセを持っている。。。『兄さん、これそこに落ちとったんやけど、使えるんかなぁ?』
というので受け取ってSWを入れると、見事にラジオの音が鳴った。
『う~ん大丈夫ですね。スイッチはここですよ』
と渡すと、しばらくあちこちいじくってから
『兄さん、これ、電池は何を使うんやろか?』
『単2ですね。○○本(確か6本だった)使っています』
ぶつぶつ言いながらいじっていたと思うと、意を決したように
『よしっ、これ兄さんにやるわ!』『ええか、電池を買ったら金がかかるから、
電池がなくなるまで聞いとったらええ!』『違いますってば!私はちゃんと働いていて・・・』
『ええから、ええから、
事情はみんないろいろあんねん』(聞く耳全くなし!)
『わしなぁ、サ・ワ・ダっちゅうねんけど、なんか聞かれたらわしの名ぁを出せばええから』
『ずうっとここに住んでいても大丈夫やから、半年でも1年でも、好きなだけおったらええよ』
『そのうちええこともあるから、兄さん、気い落としたらあかんでぇ!!』
と励まして?くれた・・・・
この時は「電池を買う金もないなら、金を恵もうなんてしなけりゃいいのに」
と思っていたんだけど、今この文章を打っていて、初めて気付いた。
電池代がもったいないからラジカセを置いて行ったのではない。
俺のためにワザワザ置いて行ってくれたのだ・・・
自分でもラジオを聴きたかったからブツブツ悩んでいたんだろう。
と思っていたのだが、さらに後日、文章を校正していて気づいた!
俺の電池代を心配していたんじゃないのか???
ナンテイイオヤジダッタンダ・・・(泣)
と同時に、乞食に同情された上、壊れたラジカセをめぐまれた人に決定・・・ 俺 (・o・)/
今までもツーリング中にホームレス扱いされたことは多いが、今回のはすごかった
もう次が来ないうちにとそそくさと出発。
何となく臭うような気がして、コンビニでレモンの香り入りの臭い消しを買って、駅のトイレであちこちに振りかけた。
ふと鏡を見ると、高速バスと野宿でヨレヨレになったコートを着た俺が突っ立っていた。
手に、パンパンに膨れたバッグを持って、おまけにビニール傘まで刺していた。
それは非の打ち所がどこにももない、完全無欠のホームレスの姿であった!!!
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